渡辺一夫の声 「戦」の「後」であり続けるために

 私は元旦は新聞各紙の社説を読むようにしています。今日は、社説のほかに岩波書店の広告が目に飛び込みました。大江健三郎氏の「渡辺一夫の声が聞こえる」という見出しの単文です。
 <「狂氣」なしでは偉大な事業はなしとげられない、と申す人々も居られます。それはうそであります。「狂氣」によってなされた事業は、必ず荒廃と犠牲を伴います。真に偉大な事業は、「狂氣」に捕えられやすい人間であることを人一倍自覚した人間的な人間によって、誠実に執拗に地道になされるものです。>
 「狂氣」は避けねばならないし、他人を「狂氣」に導いてもならない。冷静が、その行動の準則とならねばならない。<そして、冷静とは非行動と同一ではありませぬ。最も人間的な行動の原因となるものです。但し、錯誤せぬとは限りません。しかし、常に「病患」を己れの自然の姿と考えて、進むでありましょう。>
 戦後70年の2015年。「この道しかない」と声高に叫ぶ人々が日本の政治を握っている今日。大江健三郎氏が新世代に贈るとした渡辺一夫氏の「声」をかみしめていきたいと強く感じた元旦です。